先日注目すべき新聞報道がありました。
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日本には最低賃金法という法律があり、労働者に支払う一時間当たりの賃金の最低ラインが決められていることは多くの方がご存知と思います。
(目的)第一条 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
この最低賃金には、都道府県ごとに定められる『地域別最低賃金』と、産業別に定められる『特定最低賃金』の2種類があります。
特定最低賃金は、文字通り特定の産業において労使の申出があれば、厚生労働省の最低賃金審議会による議論を経て、地域別最低賃金を上回る水準で別途その産業のみに適用される最低賃金額を決定できるものです。
現在(2018年4月1日現在)、全国で233件の特定最低賃金が定められており、このうち232件は各都道府県内の特定の産業について定められており、1件は全国単位で定められています(全国非金属鉱業最低賃金)。
※地域別最低賃金(2018年度)と各都道府県内の特定最低賃金はこちら↓
特定最低賃金は一定の産業に限られますので、地域別最低賃金の対象となっている人の方が多いと思います。
地域別最低賃金は、各都道府県における労働者の生計費や賃金、また企業が通常支払える賃金支払能力(つまりその地域の経済状況)を考慮して定めることとなっていますので、一般的に人口や産業が集中する都市部では高くなり、その反対で地方は低くなる傾向にあります。
※参照→平成30年度 地域別最低賃金がほぼ出揃いました - 社労士PAKの労務日記
今回のこの記事によると、政府はこの地域別に定められている最低賃金を、業種ごとに全国一律化しようとしているとのことです。
記事によるとその狙いは、外国人労働者を地方に定着させるとのことで、その対象となる業種は、今年の4月から始まる外国人受け入れ制度(特定技能制度)の対象となる14業種*1を検討しているとのことです。
狙いは外国人人材の地方定着とありますが、もちろん法改正されればその最低賃金は日本在住の誰にでも適用されます。
例えば現在地域別最低賃金が最も高い東京都と、最も低い鹿児島県の間には224円の差があります。
当然検討されている業種ごとの最低賃金が地域別最低賃金を下回ることはありえないでしょうから、このまま適用されると鹿児島県で事業を営む上記14業種では、東京都並みの賃金を支払わなければならなくなるということです。
地方の中小企業がが持ちこたえられるとはとても思えません。堪えられない企業は潰れてかまわないということでしょうか。
外国人人材を地方に定着させる前に、その地域の産業が潰れてしまっては元も子もないと思うのは私だけでしょうか。
外国人人材の地方定着という観点で言うならば、国から地方公共団体への助成を増やし、行政サービスを充実させるなど、他にもやれることは沢山あると思います。
*1:①建設業、②造船・舶用工業、③自動車整備業、④航空業、⑤宿泊業、⑥介護、⑦ビルクリーニング、⑧農業、⑨漁業、⑩飲食料品製造業、⑪外食業、⑫素形材産業、⑬産業機械製造業、⑭電気電子情報関連産業