ネットワークの経済性を活用する

 ネットワークの経済性という言葉をご存じでしょうか。

ネットワークの経済性とは、SNSや電子メール、電話などネットワーク型のサービスにおいて、利用者が増えれば増えるほど、個々の利用者の利便性が増し、顧客獲得コストやサービス提供コストが低減する現象を指す。ネットワーク外部性やネットワーク効果とも呼ばれる。

ネットワークの経済性|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA

 

 上記URLの続きを読んでいただければわかるように、ネットワークの経済性が働くと、利用者にとっては利便性が倍々ゲームのように高まります。

 上記記事中では事例としてメルカリを挙げていますが、他にもFacebookやX(twitter)、Instagramなどの有名SNSなどが分かりやすい事例として挙げられます。

 SNSはたとえどんなに便利な機能がついていたとしても、一人だけ登録していても何の意味もなく、利用者にとって利便性は増しません。しかし利用者が増えると知り合いを見つけやすくなったり、多くの人に自分の投稿を見てもらえるようになるので、益々そのネットワークに入りたい人が増えるわけです。

 また、企業側からすれば例えばシステムの開発にかかる費用は、利用者が一人で合っても1000人であってもそれほど変わるものではなく、利用者が増えれば増えるほど一人当たりにかかるコストが削減されることとなります。 

 古くはビデオテープの『VHS vs ベータ』による競争にVHSが勝利したことも、このネットワークの経済性が働いたと言えますが(友人同士の貸し借りやレンタルビデオ店での商品増加など利便性が増す)、インターネットを活用したサービスが当たり前のようになっている現在では、こうした"モノ"に対する効果よりもはるかに効きやすいと考えられます。

 

 さて、ダラダラと言葉の説明をしてしまいましたが、これを自社のサービスに結び付けるとどうなるでしょうか。

 例えば飲食店のポイントサービスやクーポン券の発行を、メールやアプリを通じて行うことはもはやデフォルトとなりつつあります。多くのベンダー(販売業者)が様々なサービスを開発・提供していますが、利用者(この場合は飲食店の顧客)からするとその店のためだけに新たなアプリをダウンロードしたり登録するのは少々手間がかかります。というより、現代では中々億劫な作業と言えるかもしれません。

 

 これが10代から60代の8~9割が利用しているとされるLINEを利用するとどうでしょうか。

 LINE自体は既にほとんどの人が利用しており、QRコードを読み取っていただくだけでお客様と繋がれ、クーポンやポイントカードを配布し、更にはお客様同士でプレゼント(ギフト)をやり取りする仕組みなども簡単に作れます。

 小さな会社や飲食店において自社でアプリを開発したりネットワークの経済性を作ることが出来なくても、LINEという媒体を活用することでその恩恵にあずかることが可能となります。

 もちろんLINEを活用しているお店は既に大量に存在しているわけですから、自社において独自性を発揮しているわけでもなく、今や目新しさがあるわけではありません。

 ただ、そもそもクーポン券にお客様が求めているのは目新しさより、利便性ですよね。お店からの連絡もメールで来るよりLINEで来たほうが見やすいし、ある意味無視したりブロックするのも簡単で便利です(お店からしたらもちろんブロックしてほしくはないのですが)。

 

 ネットワークの経済性が効いた商品やサービスは、なんとなく「右へならえ」な感じがして抵抗感を持つ人もいるかも知れませんが、とても強力な力を持っているため実際にビジネスを進めるのであれば利用しない手はありません(むしろネットワークの経済性を持たない会社があっという間に淘汰され、導入したサービス自体が使えなくなるという事態も十分あり得ます)。

 

 各種のサービスが大量に出回っており、どのサービスを使えば悩んだときは、ネットワークの経済性を思い出してみてください。

 「一番売れているから(利用されているから)」という理由だけでサービスを選んでも、あながち間違いではないかも知れません。