昨日(6月12日)、ついに第二次補正予算が成立しました。
以前の記事で「最終形」と紹介した雇用調整助成金ですが、(多分)最後の最後の修正が加えられ、形が全て整いました。
さすがに今回は厚労省も事前準備をしていたようで、補正予算に従い修正された申請書なども昨日のうちに公表されるなどのスピードぶりです。既に作成途中であった申請書に関しては再度データの打ち直しなどは必要かもしれませんが、従業員数が多くなければそれほど大変ではないでしょう。
それでは今回の変更点です。
1.緊急対応期間が延長されました(4月1日~6月30日→4月1日~9月30日)
コロナ関係の様々な特例は1月24日以降の休業に関して適用されてきましたが、その内でも4月1日~6月30日を緊急対応期間として大幅な要件緩和などの措置が取られてきました(今思えば4月初旬頃は多数の相談対応と連日変わる情報に振り回されて本当にきつかったなぁ...( = =) トオイメ目)。
しかし非常事態宣言や〇〇アラートが解除されたとはいえ、経済活動に関してはまだまだ回復には程遠く、多くの企業において休業を免れない状況は続いております(むしろ今から厳しくなる業界もあることでしょう)。
よって雇用調整助成金の利用は多くの企業においてまだまだ続くことが予想されるから、この度の延長措置となったのでしょう。
緊急対応期間の延長と関連して一つだけ気を付けていただきたいのは支給申請期限です。
こちらの記事で支給対象期間の初日が1月24日から5月31日までの休業の申請期限が8月31日までに延長されたことをご紹介しました。
この部分には変更がありません(少なくとも私は今のところその文言を探せていません)。つまり休業の初日が5月31日までの支給対象期間の申請期限までもが9月30日に延長されたわけではありませんので、ご注意ください。
9月30日まで延長されたと喜んで、5月までに取得した休業の申請までもを9月でイイやと余裕でいるとそもそも申請できなくなるので大変です。助成金は一日でも期限を過ぎると一切取り合ってもらえませんので重ね重ねご注意ください。
2.日額上限額が引き上がりました(8,330円→15,000円)
最も大きく報道されてきた内容ですので、雇用調整助成金の支給額には上限があり、それが日額8,330円であったことは多くの方がご存知のことでしょう。
フルタイムで働く人で考えると東京都の最低賃金にほぼ近い額が上限なわけですから、上限を超える人は少なくありません。
すると休業中も従前通りの賃金(休業手当)をあげたいと思っても、場合によっては助成金でその半分程度しか戻って来ない、なんてことになってしまうのです(売上はゼロなのに!)。
これが企業が休業手当の支給率を抑えてしまう要因の一つとなったとも言えます。
そしてたくさんの声が上がり、ようやく今回特例的に上限が引きあがられることとなりました。
日額15,000円が上限という事は、週休二日の会社ですと最大33万円程度までを助成金として受給できることになります。
さてここで問題なのが、既に支給申請をしてしまった、又は既に支給された場合はどうなるかということです。
ここが明確でなかったために、今まで支給申請をせずに待機していた会社も多いはずです。今回ようやくその答えが出ました。
休業手当の支給日額が8,330円を超えてたけど、
①支給申請を既にして、まだ支給決定はされていない場合
・追加支給の手続は「不要」
・差額(追加支給分)も含めて支給されます(労働局で計算してくれます。ただし審査の状況によっては差額は7月以降に別途支給される可能性あり)
②既に支給決定されてしまった場合
・追加支給の手続は「不要」
・差額は7月以降順次支給されます(労働局で計算してくれます)
③既に支給申請をしたけれど、過去の休業手当を見直して追加支給したい場合
※上限額や助成率を鑑みて休業手当の支給率を一定程度抑えたのだけど、せっかく上限額も助成率も上がるならもっと従業員に手当をあげたいなんて場合ですね。
・追加支給の手続が「必要」(2020年9月30日までに必要書類を提出)
といったこととなりました。
①②に関しては大方予想はしておりましたが、③はちょっと想定外でした。少々手続きは面倒かもしれませんが、より従業員の方へ手厚い手当を支給したい場合には検討してみるのも良いと思います。
申請期限が9月30日ですので、例えば今後1~2カ月の間に業績が回復し資金繰りにも目途が立った場合に、その時点で過去の分を遡って追加支給してあげるなどの措置も可能かと思います。ご検討ください。
3.一定の要件を満たした場合の助成率が引きあがりました(原則90%→一律100%)
一定の要件とは次の二つの要件を指します。
①令和2年1月24日から賃金締切期間(判定基礎期間)の末日までに、解雇等を行っていないこと
(解雇とみなされる有期雇用労働者の雇止め、派遣労働者の事業主都合による中途契約解除等を含みます。また、新型コロナウイルス感染症を理由とする解雇も含まれます
② 賃金締切期間(判定基礎期間)の末日時点の従業員数が、令和2年1月24日から賃金締切期間(判定基礎期間)の末日までの各月末時点の従業員数の平均の5分の4以上であること
ざっくりいうと、1月24日以降に解雇等(解雇や雇止め)をしていなくて、更に従業員(パートやアルバイトも含む)が80%未満に減っていない場合には、支給した休業手当の支給率に関わらず(以前は支給率100%などの要件がありました)、その満額を助成金として受けられることとなります(日額上限は15,000円)。
1月24日以降に解雇等がされていたり、従業員数が80%未満になってしまっている場合の助成率は80%のままですのでご注意ください。
4.雇用調整助成金の支給対象になる出向の出向期間が緩和されました(三か月以上一年以内→一カ月以上一年以内)
さて、新型コロナによる影響が拡大される中、幾多に及ぶ改定や修正が繰り返されてきた雇用調整助成金ですが、これにていよいよ完成した模様です。
上限額が引きあがった場合に、既に支給申請した分が遡って支給されるのかが分からず、申請を留まっていた企業や社労士も多数います(私もその一人ですが)。
今回の改定を受けて来週以降一気に申請が増えることでしょう。
現在のところ申請からおおよそ3~4週間程度で支給決定がされてきた印象ですが、下手をすると更に大幅な時間がかかることとなるかも知れません。
助成金に携わっている労働局や厚生労働省の方々に敬意を表しつつ、私自身も中の人たちが分かりやすい書類を作成することで、少しでもスムーズな支給に貢献したいと思っております。
※雇用調整助成金の支給申請の際には必ず最新の情報をご確認ください。