新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金①

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 休業手当を貰えなかった労働者が、自ら申請し受給することが出来る『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下:休業支援金)』の申請受付が開始して約2カ月程経ちました。

 

 厚労省HPによると、8月27日時点で16万5千件の申請があり、6万8千件が既に支給決定されているようです(支給決定額は58億4千万円)。

 

 さてこの休業支援金について記事を書くには、会社側と労働者側と両方の視点から書く必要が出てくるのですが、まずは会社側の視点からいくつかポイントをお伝えします。

 

ポイント1.そもそも休業手当を支払わなかったことは違法ではないのか?労働者が休業支援金の申請をすることで労働基準法違反を問われるのではないか?

 

 労働基準法では『使用者の責』により従業員を休ませた場合、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことを義務付けています。

 

 この『使用者の責』とは、いわゆる経営不振なども含まれており広く解釈されているところですが、今回の新型コロナウイルス感染症の影響による営業自粛要請などに従った場合までもが『使用者の責』と言えるのかは正直はっきりしません。

 業種、業態、自粛要請の有無、立地(例えばイベント会場の中のお店で、そのイベント会場自体が閉鎖された場合など)、休業回避努力の状況など様々な要素から総合的に判断するしかないと思われ、今後もし裁判などがあればその解釈が個別に定まっていくのではないかと思われます(この点、厚労省HPに掲載されているQ&Aもはっきりと明言はしていません)。

 

 しかし現実的には今回のコロナの影響による休業が『使用者の責』によるかよらないかを問わず(休業手当支給の義務があるかないかに関わらず)、休業手当を支払えば雇用調整助成金を利用することが出来ることとなり、国としては雇用の維持のために休業手当の支払いと助成金の活用を促しているところです。

 

 さて、では自社の社員やアルバイトが今回の休業支援金の申請をした場合に、即労基法違反(休業手当の支払い義務違反)となるのでしょうか?

 

 前述のように、それが労基法違反かどうかは業種や自粛要請の有無などにより判断が分かれるところではありますが、休業支援金のQ&Aには以下のように記載されています。

『新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金 Q&A(P8)』

支給要件確認書における、使用者の「休業手当を払っていない」旨の記述や、労働者の「休業手当の支払を受けていない」旨の記述は、労働基準法第 26 条の休業手当の支払義務の有無の判断に影響することはありません。

  つまり、従業員が休業支援金の申請をしたからといって、それがすなわち「お前んとこ休業手当の支払い義務があるのに、払ってないのか!労基法違反だ!!」とはならないということです。

 

 一方で、そのすぐ下段に

労働基準法第 26 条の休業手当の支払義務が認められる事案においては、雇用する労働者が休業支援金を受給した場合でも、それによって同条の休業手当の支払義務は免除されないことにもご留意ください。

 とも書いており、だからといって本来休業手当の支払い義務があると判断される場合、従業員が休業支援金を受給したことでその義務が消えるわけではないと一応クギもさしています。

 ただ従業員としてはよほど感情の縺れが無い限り、お金が入れば基本的には納得すると思われ、あまり気にする必要はないかも知れません。

 

 ということで、まずは雇用調整助成金の活用を検討するのが前提とはなりまが、残念ながら休業手当を支払えなかった(支払えない)場合で、従業員から要求があれば積極的に応じてあげるべきでしょう(申請書には会社の証明などの記入欄があります)。

 

 

・・・長くなったので、数回に分けてお届けします。