2023年度も厚生労働省管轄の雇用関係助成金が出揃いました。
助成金は、時の政府がその政策を推進するための「手段」です。すると今年度は、賃上げ、労働移動、リスキリング、高齢者、子育て・介護辺りがポイントになるでしょうか。
以下に簡単ではありますが、いくつかの助成金とその特徴等をご紹介します。
1.処遇改善に関する助成金
①キャリアアップ助成金
非正規雇用(パートや契約社員等)の従業員を正規転換することで受給できる『正社員化コース』を始め、今年度も継続する助成金です。
ただし、『正社員化コース』は正規転換後の賃金3%アップに加え、昇給や賞与又は退職金の規定が必須となり、要件は年々厳しくなっています。
毎年最低賃金の引き上げに合わせて時給アップを図らなければならないのであれば、予め同助成金の『賃金規定等改定コース』を活用するのも良い選択です。例えば非正規雇用労働者の賃金を3%以上増額することで、賃金を引き上げた労働者一人当たり6万5千円を受給可能です。
②65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
少子高齢化が進む中、高齢者雇用は今後も国の重要な政策課題となります。一年以上雇用する60歳以上の雇用保険被保険者がいる会社で、一定の要件を満たしたうえで定年を引き上げたり無くしたりすると最大160万円が受給できます(対象労働者10人以上の場合)。
2.子育て等に役立つ助成金
①両立支援等助成金(出生時両立支援コース)
男性の育児休業取得率を高めることも日本社会全体の課題です。男性育休取得率100%を宣言する企業も増えており、中小企業とはいえその流れに逆らうことは出来ないでしょう。
本助成金は男性が子の出生後8週間以内に5日以上の育休を取得することで受給可能となる助成金です。受給額は20万円とそれほど大きくはありませんが、その後育休取得率を高めることで増える可能性があります(最大プラス60万円)。
②両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
こちらはよりオーソドックスな育児休業に対する助成金です。対象労働者が、育休取得や職場復帰をしやすい環境を整える等の措置をした上で、実際に育休を取得し復帰をすることで受給できます(それぞれ30万円)。復帰後支援(有給の看護休暇制度の導入など)で更なる加算もあり(30万円)、比較的受給しやすい助成金と言えます。
3.働き方改革等に役立つ助成金
①働き方改革推進支援助成金
働き方改革を推進するため、専門家によるコンサルティングや労働能率増進に資する設備・機械などの導入に対する経費助成です。複雑で様々な要件がありますが、助成額が最大200万円と大きいため、上記機器の導入などを考えている企業はチャレンジする価値があると思います。
また、これまで時間外労働の制限が猶予されていた建設業や運送業に関しては(2024年4月猶予期間終了)、最大250万円と更に助成額が大きくなっているため要チェックです。
②産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)
本年4月1日以降、事業再構築補助金の交付決定を受けた企業だけが申請できる助成金です。
補助金の対象となった事業に就く新たな人材を雇用することで280万円が受給可能です(人材には一定要件あり)。この助成金も知っていたか知らなかったかで大きな差が出るため、予め認識したうえで補助金申請に取り組むと良いでしょう。
他にも多数の助成金がありますが、詳細は厚生労働省のHPなどでご確認ください。
助成金は要件を満たせば受給できるものではありますが、その要件や審査は年々非常に厳しくなっている印象です。
就業規則の文言や賃金の計算など、重箱の隅をつつくような指摘も少なくありません。決して”簡単に”受給できるものではありませんが、事前に知っていることで様々な準備も可能となります。
ただし、助成金欲しさに無理やり制度を導入するなどの行為は、中長期的に見てむしろマイナスの影響となりますし、下手をすれば不正受給を誘導する可能性すらあります。
自社に本当に必要な制度なのかよく確認した上で受給へと取り組みましょう。
(東)