【新型コロナ】雇用調整助成金申請が大幅簡素化(これが最終形か!?)②

 先日の記事でお伝えした雇用調整助成金申請の簡素化。一体何が変わり、どんなことが簡素化されたのか、一つ一つ見ていきましょう。
(ちなみに5月19日の公表後、5月22日には新しいガイドブックも出ましたが、これがまたチョコチョコ修正されています。が、その辺は慌てて作成したために生まれた細かいミスみたいなもので、大きな問題ではないと思われます。社労士などの専門家はその度に「えー!」となりがちですが、数日経てば落ち着くことでしょう。)

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 まずはやはりこちらから。

1.小規模事業主の申請手続の簡略化について
 
小規模事業主(概ね従業員20人以下)の申請様式が大幅簡略化。添付書類も減。
②その小規模事業主は、昨年の労働保険料や雇用保険被保険者数の平均、年間所定労働日数から割り出していた助成額の基となる「平均賃金額」という面倒くさい計算を、実際に支払った休業手当の額から算定可能に 

 

 従業員が概ね20人以下の小規模事業主に関しては、書類自体が大幅に簡略化されました。実際に私もご依頼受けた会社の書類を改めてこちらの様式で作成してみましたが、確かにかなり簡略化された印象です。

 雇用保険に加入している人達用(雇用調整助成金)と雇用保険に加入していない人達用(緊急雇用安定助成金)の二種類がありますが、ここでは雇用保険に加入している人達用(雇用調整助成金)の申請様式を見てみようと思います。

 

特徴1-申請書類様式が5枚→3枚に減少

 小規模事業主用の様式で申請をすると、書類が減ります。

 何が減ったかというと、①事業規模が減少したことを申し出る様式が無くなり、支給申請書の一項目で「はい・いいえ」で答えれば良くなりました(従来の申出書では、昨年と今年の売上高などを記入し、減少率を計算・記入し、更に新型コロナウイルス感染症の影響で減少したことを文章で記入する必要がありました。他にも事業主の住所や代表取締役の名前など、他の様式でも記入する同じ内容を繰り返し記入しなければなりませんでした)。※ただし小規模事業主用でも売上等の減少を証明する書類は必要です。

 もう一つ無くなった書類は②助成額算定書です。従来の様式では前年度の労働保険料申告書から前年度の確定保険料を記入し、昨年度の雇用保険被保険者数の平均を出し、更に年間所定労働日数を算出して「平均賃金額」というの出して・・・・ってことをやる必要がありました。シフト制などで所定労働日数がバラバラだったりすると、ここをどう記入するか悩ましかったりしたのです。

 今回小規模事業主用の申請書では、このような面倒くさい計算方法がそもそも刷新され、実際に支払った休業手当を基に助成額を計算できることになったため、この助成額算定書が必要なくなりました。

 変わりに、休業実績一覧表に実際に支払った休業手当を記入し、その合計額と助成率を支給申請書に記入することにより簡単に助成額を算出できるようになりました。

 

 

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特徴2-助成額の算定が簡単に

 特徴1でも紹介しましたが、助成額の算定が簡単になりました。

 勿論休業手当の支払い率を事前に従業員と合意しておくことが前提とはなりますが、小規模事業主用の申請書では「前年の労働保険料が~」とか「年間所定労働日数が~」などの小難しい話は無くなり、労使の協定に基づいて実際に支払った額をとにかく記入、自身の事業所の助成率をチャート表から割り出して、後は電卓弾いて!という感じで終わります。

 勿論実際の審査の際には、添付書類である賃金台帳(又は給与明細)や出勤簿(又はタイムカードやシフト表)からその休業手当は正確に計算されているか、労働基準法で定められた休業手当の額を下回っていないかを調べることにはなるでしょうが、書類の作成に当たってはかなり楽になったと言えるのではないでしょうか。

 

 上記の画像は雇用保険加入者用の書類ですが、雇用保険に加入しない労働者用の書類もほぼ同じです。

 

 さて、それではそもそも「小規模事業主」というのは一体具体的な線引きはあるのでしょうか?

 実はこれ、「概ね」とあるように、結構曖昧なようです。

①「概ね20人以下」とは正社員もパート・アルバイトも含めた全体数である

②29人までは受け付ける

③雇用保険被保険者29名+雇用保険被保険者以外の労働者29名でもOK

④実は特に線引きは無い(何人であろうが小規模事業者用の書類を利用するなら受け付ける)

などなど、コールセンターや各労働局、厚労省と問い合わせをする場所によって回答にかなりばらつきがあるようです。

 

 よって明らかに20人以下の事業所であればそのままこちらの申請方法を利用してOKですが、悩むようでしたら一度管轄の労働局やハローワークにお問い合わせするのが良いでしょう。

 

 また、雇用調整助成金は事業所ごとの申請となりますので、複数の支店や店舗を持っており、それぞれが単独の雇用保険設置事業所として存在する場合には、それぞれの事業所が概ね20人以下であれば、それぞれ小規模事業者用の申請方法が利用できます。

 

 そして最後に、なんとここにきて(5月22日)厚労省が『はじめての雇用調整助成金』なるリーフレットを出してきました。ここにきて『はじめて』・・・(笑)

https://www.mhlw.go.jp/content/000632992.pdf

 我々社労士からすると「今までの約3カ月は何だったの!?」という感じもしますが、これも厚労省の中では『今回の特例、これで最終形態』という考えがあるのではないかと個人的には推測しています(細かい修正は今後も色々あるでしょうが)。

 

 ということで、雇用調整助成金は今からが始まりです。これまでの労務管理に明らかな労基法違反があるなどの場合を除き、諦めないでチャレンジし、大切な従業員の雇用を守りましょう!アフター・コロナはすぐそこです!

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※実は助成額のことを考えると、小規模事業主用の申請書が必ずしも良いわけではない場合があります。それはまた次回、か、その次か、更にその次か、、、

 

www.mhlw.go.jp