旅館業の奮闘

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 『働き方改革』や人手不足など、中小企業やサービス業にとっては頭の痛い問題が山積みではありますが、様々な策を練りつつ新しい時代での生き残りをかけた業界や企業もあります。

 

 今回は旅館業での奮闘をご紹介します。

 

老舗旅館、週三日休館でも売上倍 目をつけたのは・・・

※ネタ元:老舗旅館、週3日休館でも売り上げ倍 目をつけたのは…:朝日新聞デジタル

 

 神奈川県秦野市の鶴巻温泉に『陣屋』という旅館があります。

 こちら創業100年を超える老舗旅館とのこと。

 2009年に先代が急逝し、当時大手自動車会社の技術者だった長男が急遽後を継いだそうです。そして妻となる女性は旅館で働いたこともなく、出産2か月後に女将に。。。

 

 借金10億円。旅館経営の経験もなく、どんぶり勘定に在庫の無駄、経営分析をしようにも紙の台帳しかない状況。。。

 

 そこでまずは後を継いだ長男の経験を生かしてITをフル活用。

 従業員全員にタブレット端末を配布。浴場にセンサーを取り付け入浴者数を把握。掃除のタイミングもそれらで確認できます。

 予約客の車が駐車場に到着すれば、駐車場に設置したカメラがナンバーを自動判別。駐車場の係がその場で予約の名前を把握できます。よって車から降りた瞬間から、名前を添えて呼べるとのこと。客の立場からすればとても嬉しいですよね。

 

 更には情報を全従業員が共有することになり、従業員自らの仕事に対する意欲、創意工夫がどんどん高まりよりよいサービスが生まれて行ったと言います。

 

 そうして仕事の生産性と顧客満足度が上がることにより、業績が上向きになったそうです。

 

 

 しかしここで終わらなかったのがこの旅館、この経営者の凄いところと思います。

 

 業績が上向いても毎日休みなく働く女将さんの体は限界、おそらく従業員も同じような状況だったのでしょう。

 

 そこで取った対策が、なんと週2日の休館日(+1日はランチのみ営業)。

 

 旅館が休業するとは多くの人が考えたことすら無いのではないでしょうか。当初は当然苦情もあったそうですが、それでもグループ全体の売り上げは現在では跡を継いだ当時の約3倍。正社員の平均年収も増加。離職率はなんと33%から4%に下がったと言います(厚労省の調査では最も離職率が高いとされる宿泊業においてこの数字は驚異的です)

 

 記事最後に紹介されている女将さんの言葉が印象的です。

「サービス業は、働く人の『人に喜んでほしい』という思いに頼りすぎていた」と、知子さんは思う。忙しいのに収入は多くなく、結婚を機に辞めた男性もいた。「子育てや介護といったライフステージに対応できるような取り組みを、業界に広げたい」と知子さん。「旅館業を憧れの職業にする」のが目標だ。

 

 

 旅館業であれ何であれ、サービス業は顧客にサービスを提供するのがもちろん第一義的な目標・目的ではありますが、そこで働く従業員にも当然家族があり趣味もあり、生き生きとした生活を送る権利があります。

 従業員が疲弊してしまっては顧客に良いサービスなど提供できるはずがありません。

 

 「旅館業を憧れに」

 女将さんの思いが広がり、実になることを願ってやみません。

 

 そして実は私鶴巻温泉には何度か行ったことがあります。いつも駅前のスーパー銭湯で入浴するだけで、すぐ近くに旅館があることは知っていましたが(「結構有名なんだよ」と同行者に聞いたこともあるような・・・)、こんな素晴らしい旅館とは恥ずかしながら知りませんでした。いつかは陣屋に泊まってみたいものです。
www.jinya-inn.com